建築施工図を作図するには様々な知識が必要になる

前回はプロとして建築施工図を作図する為に、どのようなスキルが必要になるのかについて考えてみました。
まずはCADを操作するスキル。
そして次に「建築に関する知識」について書いている途中で、長くなりすぎてしまいました。
文章を書くというのはなかなか難しいですね。
特に、自分の持っている知識を簡潔に、そしてなおかつ分かりやすく説明していくのは。
という話はさておき、設計図をきちんと読みとることが出来る能力が必要になる、というところまで前回は書くことが出来ました。
なので今回は引き続き、建築施工図を作図する為に必要なスキルのひとつ、建築に関する知識の説明を続けましょう。


■建築に関する知識2
プロとして建築施工図を作図する為に必要なスキルということで、前回は設計図を読みとる能力について書きました。
もちろんそれ以外にも必要なスキルはありますので、引き続きそのあたりの話をしていきましょう。
・建築工事についての知識
建物を建て始める段階から建物が完成するまでに、どのような内容の工事があるのでしょうか。
多少は建物の規模や構造によっても変わってきますが、ざっくりと書いてみるとこんな流れになるはずです。
準備工事(仮設事務所などの工事)

山留・根切工事(土を掘る工事・掘った土を崩さない為の工事)

杭・基礎工事(建物の基礎を造る工事)

鉄骨工事(建物の骨組)

鉄筋・型枠工事(建物の骨組)

外装仕上工事(建物の外回り仕上げ)

内装仕上工事(建物の中の仕上げ)

外構工事(建物周囲の道路などの工事)
これらの項目については、別のカテゴリーでもう少し詳しく説明をしていくつもりです。
簡単に書いてみても、建物の完成までに様々な種類の工事があることが分かると思います。
建築施工図を作図する為には、これらの工事の内容についての知識も必要になってくるんです。
もちろん実際に作業をするのは職人さんになる訳ですけど、工事の時期とか手順についての知識はある程度欲しいですね。
いつどんな工事をするかを知らないと、どんなタイミングでどのような図面が必要になるかなんて分かりませんから。
建築施工図に求められるのは「正確さ」と「分かりやすさ」ですが、それ以前の問題として「必要な時に図面があるか」が大事になってきます。
工事の流れを把握して、建築現場で必要とされる前に建築施工図をまとめておく。
建築施工図の担当者には、そのような仕事が求められるんですね。
・建築材料についての知識
その建物でどんな材料を使うのか、というのは設計図を見れば基本的に書いてあります。
外壁はタイルを貼るだとか、ホールの床には石を張るだとか、会議室の床はカーペットだとか。
仕上げの材料を考えるのは設計者の役割ですから、それはほぼ間違いなく設計図を見れば分かるはずです。
でも、その材料にはどんな特徴があって、施工をする際にはどんなことに気をつければ良いのか。
そのあたりの「実際の施工で出てくる詳しい情報」というのは、設計図ではなかなか表現することが出来ません。
設計をする段階で、そうした専門的な工事をする業者が設計協力をすることがほとんどです。
だから専門的な図面が設計図に追加されていることも多いのですが、残念ながら全部を表現出来る訳ではありません。
なので、建築施工図にはそれらの内容が考慮されている状態が求められるんですね。
例えば建物の外壁がタイルだったとして、タイルの大きさや材質などは設計図を見れば分かります。
でも実際にタイルを貼る為に必要な寸法とか、タイルが後々割れて落ちないようにするには何が必要かとか。
そのあたりの大事な情報は、建築施工図を作図する段階で盛り込んでおかなければいけません。
床に石を張る場合には、実際の石がどの程度の厚さで、張る為のスペースがどの程度必要か。
その結果、床の仕上げレベルに対してコンクリートのレベルがどんな関係になっていれば良いのか。
そうした問題が全て検討され、なおかつクリアされた内容が建築施工図として作図されている必要がある訳です。
当然、作図者に知識が必要であることは言うまでもありません。
・建築基準法についての知識
その建物が建築基準法を満たしている、というのは当然の話であり、それを確認するのは設計者の仕事になります。
でも、建築施工図を作図する側にも、基本的な建築基準法についての知識があるに超したことはありません。
優先順位としては決して高くはありませんが、間違いなく必要なスキルの一つだと思います。