建築施工図の賞味期限

オートキャド(AutoCAD)を使って建築施工図を書く仕事をする際には、時間の感覚を磨く必要がある。

それがプロとして必要とされるスキルです、という内容の話を前回は取り上げてみました。

「時間の感覚を磨く」だと漠然として分かりにくい場合には、「時間を意識する」でも良いです。

いくら技術的に優秀であっても、そうした根っこの部分がしっかりしていないと、仕事は成り立ちません。

もちろん技術的な面で、知識を深めていくことも重要なことです。

しかしそれと同じくらい時間についての考え方も重要な要素ですから、仕事をする前に覚えておくことをお勧めします。

結局はどっちも必要なのかよ、と言われそうですが、それを仕事にするのなら、それくらいの要望には応えても良いですよね。



■時間の考え方

仕事をする上で意識をしていくべき時間については、大きく分けて2つの項目というか考え方があります。

一言で書くと「納期」そして「時給」という考え方。

前回少し例に出した「建物が完成してから建築施工図が出来上がるのでは困る」というのは「納期」の項目に入ります。

停電の時に懐中電灯がすぐに出てこないで、停電が終わってからたくさん懐中電灯が出てきたら…

きっとあなたは「肝心な時にないなんて、全然役に立たないな…」と思う事でしょう。

建築施工図も一緒で、必要とされる時に用意されていないのでは、存在しないのも同然なんです。

だからこそ、「いつ必要なのか」という時間の感覚が必要になってくる、ということですね。

もう一方の「1枚の建築施工図を作図するのに1ヶ月かかる」というのは「時給」の項目となります。

これは後で詳しく書いていくつもりですが、説明をしなくても何となく分かってしまうかも知れませんね。

こうした「納期」と「時給」という考え方。

まあ項目の名前は何でも構わないんですけど…

とにかく建築施工図を仕事とする為には、そうした2つの大きな制約がある、ということをここでは伝えたかったんです。

これらの項目についてはもう少し詳しく説明をしますので、まずは「納期」について取り上げてみましょう。

■必要な時に図面はあるか

建築施工図が必要とされるタイミングについて考える前に、そもそも建築施工図は何の為に書かれるか。

これを考えてみましょう。

基本的に建築施工図というのは、建物を建てる際に、実際に工事をする職人さんが使用する図面です。

だから当然建物を建てている際に書かれる訳です。

そうして書かれた建築施工図は、実際に工事をする職人さんが見て、書かれている通りに建物を造っていくことになります。

これがまずは大前提。

建築施工図の種類はたくさんありますが、工事の種類によって必要な建築施工図の種類は変わっていきます。

例えばコンクリート工事の際には躯体図が必要だし、内装仕上工事の際には平面詳細図が必要、という感じです。

つまり、実際にコンクリート工事を施工する前には、躯体図が最終段階になっていないとダメ、ということ。

これは内装仕上工事の場合でも同じで、内装仕上工事を始める前には平面詳細図が完成している必要があります。

必要となる前に建築施工図が完成しているか、というのが大きなポイントで、それがつまりは「納期」ということです。

これを無視して仕事は成り立ちません。

いくら完璧で一部の隙もない建築施工図を完成させても、その図面が必要とされるタイミングに間に合わないと意味がありません。

建築施工図には賞味期限があるんです。

建設現場では様々な種類の工事が施工されていき、全ての種類の工事が完了すると建物は完成となります。

そうした様々な工事のタイミングに合わせて、様々な建築施工図が必要とされ、それを間違いなく用意しておく。

それが建築施工図の作図者に求められる仕事です。

前回「建物が完成してから建築施工図が出来上がる」という極端な例を示しましたが…

実際にそんなことをしたら、それ以降もう二度とその会社から仕事は来ない、というのは想像が付くと思います。

また、建築施工図は一度の作図では絶対にまとまりませんので、作図したあとの調整にかなりの時間を費やすことになります。

そうした時間も考慮に入れて、限られた時間の中で、必要とされる建築施工図を作まとめていく。

建築施工図を書く仕事には時間の感覚が必要不可欠だ、というのは、そうした理由があるからなんです。

それがないと、建物が完成してから建築施工図が出来上がる、というのに近い状態になってしまいますから。

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