技術的な話も大事だけどスケジュール感も欠かせない

建築施工図を書くプロとして、作図した図面にはどんな内容が求められることになるのか。
前回はそんな内容の話をしてみました。
1.必要な情報を不足なく
2.誰が見ても分かるような表現を
3.出来るだけ短い時間で
というあたりが、建築施工図を実際の仕事で書いていく際のポイントになってきます。
こうして書くとあまり大変そうな感じはしないんですけど、突き詰めていくとこれが結構しんどいんです。
そうした要望を満たしてこそのプロ、ではあるんですけどね。
ということで、プロに要求される諸々の中から、今回は最後のポイントである「時間」を取り上げてみます。


■時間について書く理由
建築施工図のプロに求められるモノは結構たくさんあって、それらをひとつずつ丁寧にこなしていくのが仕事である。
とか書くと何となく格好良い感じに響きますが、実際には大抵の仕事がそうであるように、かなり地味な作業です。
もちろんプロとして報酬をもらってやっている訳ですから、それくらいはこなさないと、とは思っていますが。
建築施工図を長いこと仕事としてやっていく為には、特に「時間」という概念が重要な要素である。
ちょっと固い表現ですけど、少なくとも私はそう思っています。
今までこの仕事をしてきた中で感じるのは、時間を意識しないと仕事は成り立たない、という当たり前の事実。
そして、それにも関わらず時間を意識して仕事をしている人が全員ではない、という残酷な現実。
仕事に全力でぶつかることをよしとする人。
仕事よりもそれ以外の事にフォーカスしている人。
仕事もプライベートも両方追い求めている人。
仕事に対するスタンスは、人それぞれの価値観によって大きく変わるもので、自分のスタンスを人に押しつけることは出来ません。
しかし私は、どうせ同じことを仕事でするのなら、全力でやった方が楽しいんじゃないか、という考えを持っています。
だからこうして、かなり鬱陶しい「時間の感覚を…」みたいな話をここで書いている訳です。
時間をかければ建築施工図の精度を上げ続けることは可能であるけれど、現実的にはそんなことは出来ない。
前回そういう話をしたのは、やはり時間の感覚について触れたかったから。
現実と理想の狭間を上手いことすり抜けながら、プロとして出来る限りの成果を上げていくこと。
それが出来れば、きっと建築施工図の仕事は楽しいと思いますよ。
そして逆に、それが出来るようになる為の努力をしてこそのプロ、ということも言えると考えています。
■技術的な話はどうする?
建築施工図についての情報を発信するサイトなのに、どうして時間について触れなければならないのか?
と、そのあたりを疑問に感じる方がいるかも知れません。
確かに時間というのは、建築施工図の知識とか技術とか、オートキャド(AutoCAD)のスキルとは少し離れた要素ですよね。
そんなことよりも、まずは建築に関する知識とか建築用語を覚えるとか、そういう勉強のほうが先じゃないのか?
そう思われる気持ちは良く分かります。
しかし、実際に建築施工図を書く行為は仕事であって、当然の話ですが趣味の世界ではありません。
だから、技術的な部分だけを追い求めるだけじゃダメなんです。
仮に、建築施工図に関する知識が豊富で、様々な納まりを知っていて、作図する図面が見やすい、という人がいたとします。
これは建築施工図を作図する技術者として、ほぼ理想的なスキルを持っていると言って良いでしょう。
非常に羨ましいスキルを持っているというか、そういう人材に私もなりたいと本気で思います。
でも、根っこの部分である「時間」を全く意識していなかったら、その人は非常に残念な人材になってしまいます。
これは例えばの話ですが…
建物が完成してから建築施工図が出来上がったり、1枚の建築施工図を作図するのに1ヶ月かかったり。
そういう仕事をその人にされたら、会社としては非常に困った事態になることは間違いありません。
いくらほぼ100点満点に近い優れた建築施工図であっても、そんな仕事のペースではちょっと困ります。
まあ分かりやすくする為にかなり極端な例にしていて、実際はそこまで極端な話にはならないと思いますけど。
でも、もしそうなってしまったら仕事として成り立たない、というのは何となく想像出来るでしょうか。
建築施工図を書く際にも、時間という考え方を意識する必要がありますよ、というのはそう言う意味があるからです。