型枠のイメージ

建物の骨組みとして利用されるコンクリート。
生コンと呼ばれるどろどろの状態で、ミキサー車によって建築現場に運ばれ型に流し込まれ…
水とセメントの反応によって固くなり、次第に建物の骨組みとして耐えうる強度を持っていく。
前回はそのあたりの流れについて書いてきました。
皆さんも一度は道路でミキサー車が走っているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。
あれはどこかの現場にコンクリートを運ぶ途中か、あるいは運んだ帰りなんですね。
コンクリートの性質が分かったところで。
今回は、そのコンクリートと躯体図の関わりについて、もう少し詳しく考えていきましょう。


■コンクリートを流し込む「型」
生コンの状態で運ばれてくるコンクリートを目的の形にする為には、軟らかい状態の時に流し込む型が必要になります。
基本的な考え方はチョコレートと似たような感じですね。
お湯で暖めるとチョコレートは軟らかくなりますが、その温度が下がるにつれて固まっていきます。
なので、チョコレートを思ったような形にしたい場合、お湯で軟らかくした後で型に流し込んだ後で冷やす。
その後で型を壊すか取り外すかすれば完成ですね。
コンクリートの場合はお湯で戻るとかではありませんが、軟らかい状態のあいだに型へと流し込むのは同じです。
そして固まったら型を取り外す、というところも同じ。
で、今回お話ししたいのが、このコンクリートを流し込む為に作る「型」についてです。
チョコレートの場合はアルミ製の皿とかに流し込むだけですが、コンクリートは建物の骨組みです。
当然それなりの重量がある訳で、当然型もそれに耐えられるようなものを作る必要があります。
一般的にコンクリートを流し込む為の型は、木材(ベニヤ板)を使って作られます。
木は加工がしやすくい為様々な形に対応することが出来、強度もまずまずだというところがポイント。
ただ、木だけでは最終的にはコンクリートの重さに耐えられないので、鉄パイプなどを補強に使うことになりますが。
ということで…ここで正式な呼び方を。
運んできたコンクリートを流し込む為に、建築現場で作られる型の事を、「型枠(かたわく)」と呼ぶんです。
私の説明だけでは絶対に分かりにくいと思うので、ちょっと写真も出してみましょうか。
型枠のイメージ



写真に写っている茶色い部分が型枠ですね。
普通の板にはちょっと見えないと思いますが、それは型枠の表面に加工がしてあるからです。
コンクリートに接する部分は、ベニヤ板のざらざらした感じではなく、少しなめらかになっているんですね。
型枠というのはずっと存在するモノではなく、コンクリートの強度が出たら解体されるモノです。
だから、解体がスムーズに出来るよう、コンクリートに接する面には加工がされているんです。
ちなみに、型枠は木で出来ていることが多い為、現場で型枠を作るのは大工さんと言うことになります。
型枠大工と呼ばれることが多いですね。
私の場合、「大工さん=家を建てている」というイメージが強かったので、最初に知った時は少し驚きました。
もちろん内装関連の大工さんもいるのですが、それぞれ専門が違うということなんでしょうね。
■躯体図との関連
型枠については何となくイメージ出来たかでしょうか。
まあもっと奥の深い世界があるとは思いますが、ここではこれくらいの知識があれば充分です。
建築施工図を作図する為にもっと重要なのは、その型枠と躯体図がどのように関わるか、です。
話としては割と簡単ではありますが、ここで躯体図と型枠の絡みについて書いてみましょう。
建築施工図の中で「躯体図」は、建物の骨組みを造る為に作図される図面のことを指します。
そして型枠というのは、建物の骨組みの一つであるコンクリートを造る為の手段です。
だから、現場で作図された躯体図によって型枠を加工して、そこにコンクリートを流し込む、という流れになります。
例えば、柱の大きさをどのくらいにすれば良いのか、梁の大きさはいくつにすれば良いのか。
躯体図にはそうした情報が記載されていますから、大工さんはその躯体図を見て大きさを知ることになります。
ちなみに…
建物の骨組みについては、設計図である「構造図」が最も重要な情報と言って良いでしょう。
でも、型枠大工さんが構造図を見て型枠を加工することは、恐らくほとんどないはずです。
なぜなら、構造図はあくまでも建物の骨組みでしかないから。
構造図の条件を満たし、なおかつ仕上げの納まりを考慮した図面が躯体図、という前提がある訳です。
そんな躯体図を見て、型枠大工さんが型枠を加工していき、建物が少しずつ造られていきます。
建築施工図は現場で見られる為に作図される図面。
というのは、まさにこういう事なんですね。