ミキサー車

躯体図というのは、建物の骨組みを造る際に必要となる建築施工図のことを指します。
建物の骨組みには幾つかの種類があって、躯体図は特にコンクリートを造る為に必要になる。
前回はそのあたりまで説明をしてきました。
鉄骨も建物の骨組みとして非常に重要な役割を持っていますが、躯体図では鉄骨について全部詳しく表現する訳ではありません。
鉄骨は工場で製作をするという大きな特徴があり、その為現場で加工する為に必要となる躯体図とは少しだけ違うんですよね。
今回はそんな話の続きとして、現場で造るコンクリートがどのように成り立っているかを考えてみます。


■コンクリートとはどんなモノか
コンクリートとは一体なにか。
非常に基本的な話になってしまいますが、まずはここからスタートをしてみましょう。
意外に知っていそうで知らないこともある、ということで。
まず、コンクリートがどのような材料から構成されているか、ですが、だいたい以下のような感じになります。
・セメント(灰石と粘土を混ぜて焼いたもの)
・水
・細骨材(砂)
・粗骨材(砂利)
上記の材料を一定の割合(ずいぶん大雑把ですが…)で混ぜ合わせたものを「コンクリート」と呼ぶんですね。
もちろん、詳しく「セメントって何?」みたいなことを考えていくと、もっと奥が深い話になってきます。
もちろんそういう話に詳しくなっていくのは悪いことではないのですが、それよりも先に覚えることはたくさんあります。
何事にも優先順位があって、セメントについての深い知識は割と後ろの方だと私は思っているので、ここでは省略です。
厳密にはセメントにも色々な種類があって、それぞれの特徴が色々とあったりしますが、まあまだ良いでしょう。
セメントと水、そして粗いのと細かいのと色々ある骨材を混ぜて造ったのがコンクリートと言うことになります。
割合としては骨材が一番多いので、骨材と骨材の間をセメントと水でつないでいる、というイメージかな。
セメントというのは水に反応して固まる性質があるんです。
そうした性質を利用して、セメントと水と骨材を混ぜ合わせることによって、骨組みとなりうる強度が出る訳ですね。
セメントと水の割合、セメントの仕様、骨材などによってコンクリートの強度は変わってきます。
なので、現場では構造図に記載されている仕様と強度を守ったコンクリートを使っていくことになります。
細かい仕様はコンクリートを発注する際に指定して、条件を満たしたコンクリートを工場が持ってくる、という感じになります。
■生コン工場
先に構成を書いてしまったせいで、コンクリートがどのように現場へ届けられるかについて書いていませんでしたね。
コンクリートは基本的に工場で調合(という言葉が適切か微妙ですが…)された後、現場へと運ばれてきます。
先ほども書きましたが、コンクリートは水とセメントの硬化反応によって骨材をつなぎます。
それによって得られる強度こそ、大規模な建物の骨組みとなりうる要素となる訳ですから。
コンクリートは最初、水を加えている為に柔らかい状態です。
しかしセメントが水と反応して、徐々に固まっていくという性質を持っています。
固まる前の状態をフレッシュコンクリート、もしくは生コンクリート(生コン)と呼びます。
工場から現場に出荷されるコンクリートは、この「生コンクリート」の状態なんですね。
既に硬化したコンクリートを持ってきても意味がないですから。
軟らかい状態の生コンをどうやって現場まで運ぶかというと、ミキサー車と呼ばれる車で運ばれてきます。
ミキサー車

ミキサー車で運ぶ理由はただ一つ。
生コン工場から現場に運ぶ途中で硬化してしまわないように、常に動かしながら運ぶ為なんですね。
また、現場でも生コン工場をどこにするか決める際に、現場との距離や移動時間も検討項目に入れています。
出来るだけ近い方が有利で、あまり遠すぎると採用することが出来なくなったりもします。
では、どうして生コンの状態で工場から現場に運ばれるのか。
答えは非常に簡単で、硬化した後のコンクリートには大きな変更が出来ない、という理由があるんですね。
生コンの液状な状態で工場から現場へと運ばれ、現場で固まって強度が出る、ということです。
現場で作図する躯体図に関係してくるのは、この「現場で固めて」という部分です。
液状の物体を目的の形にするためには、当然のことですが「型」が必要になってきます。
そして型を造る為には、最終的にどんな形状のコンクリートが必要なのかが分かっていなければいけません。
何となく分かってきたでしょうか。
躯体図というのは、コンクリートを流し込む型をどんな形状で造れば良いのか、というのを表現している図面なんですね。