建物の寸法を間違えると大きなトラブルになってしまう

前回は建築施工図の中で、杭伏図を作図する為に必要な情報がどんなものか、という部分を取り上げました。
建築施工図に必要とされる情報を掴んでおくというのは、作図者にとって非常に大切なことです。
必要な情報を不足なく、そして誰が見ても分かるような内容で盛り込む。
そういう厳しい条件の中で躯体図を作図していくことが、建築施工図の作図者に求められます。
作図者として「どんな情報が必要なのか?」をしっかりと押さえておきましょう、と書いているのは、そういう理由があるから。
これが最初のステップですね。
と言うことで、今回は杭伏図の次に必要となる建築施工図「基礎伏図」に必要な情報について考えてみましょう。


■建築施工図の重み
建物を足元から支える「杭」を施工する為に必要となる「杭伏図」は、その性質上非常に重要な図面です。
建築施工図を作図する手間としてはそれほど大変ではありませんが、作図の大変さと工事の重要さは別の話。
まあ「重要かどうか」という考え方をすると、重要じゃない図面なんて書かないですから、どの図面も重要ではありますが…
それでも、間違えると建物が成り立たなくなるという点では、やっぱり仕上図とは少し重要度が違うと思います。
例えば仕上図で壁の位置を1m間違えるのと、杭の位置を1m間違えるのとでは、同じ1mでも全然意味が違います。
「それを簡単に修正出来るかどうか」という意味において、壁の位置と杭の位置は決定的な違いがあるんです。.
そういう重みがあるから、杭伏図を作図して現場に提出するのは怖い、という感覚があります。
建築施工図というのは、設計図というベースがあるにしても、自分が作図した図面を見て施工をされるものです。
だから多かれ少なかれ、そういう怖さが常についてまわる事になります。
それはどんな仕事であっても、建築施工図とは別の種類の怖さがあるのだとは思います。
仕事というのはそういうものですよね。
■基礎が持つ役割
ちょっと話が逸れてしまいましたが…
規模は様々ですが、巨大な重量を持っている建物の荷重を支持層に伝達する、という重要な役割を杭は持っています。
だからこそ間違えるのが怖いんですね。
しかし、ただ単に杭を支持層まで打ち込んだだけでは、全く意味を成さない存在でしかありません。
その杭の上に建物を載せないと、荷重は計算した通りに杭へと伝達されない状態になります。
建物の荷重を杭に伝える存在である「基礎」
これが杭の上に正しく施工されないと、杭は単なる棒状の物体が地面に埋まっているだけ。
ということで、「杭伏図」と同じくらい重要な建築施工図である「基礎伏図」を今回は取り上げる訳です。
基礎にはどんな役割があって、どこに施工されるものなのか、そして基礎にはどんな種類があるのか。
基礎伏図に必要な情報を知る前に、まずは基礎についての知識を深めていく事にしましょう。
■杭と基礎の関係
先ほども書きましたが、基礎というのは杭の上に施工され、建物の荷重を杭に伝える役割を持っています。
そして、伝達された荷重は杭を通して支持層に伝わる事になります。
支持層というのは、非常に締まった地盤、もしくは固い岩盤などで、要するに大きな力を加えても変わらない部分ということです。
そういう部分は、その土地の地盤によっても違いますが、地面を深く掘っていかないと出てこない事が多いです。
特に埋め立て地とかでは、元々海だった部分の土は支持層には成り得ない為、支持層は非常に深いレベルになる訳です。
だからこそ、細長い「杭」という物体を打ち込んで、その上に建物を建てるという面倒な手続きをするんです。
とまあメンドクサイ書き方をしましたが…
固い地盤に打ち込んだ杭の上に基礎を施工して、建物の荷重に耐えられるような土台を作る。
そういう表現の方が分かりやすいかも知れません。
どちらの表現を使うにしても、基礎というのは建物が成り立つ為の必要不可欠な要素、ということに違いはありません。
もちろんその土地の地盤によっては、支持層が非常に浅い部分に存在している場合もあります。
そういう地盤の場合は、そもそも杭が必要ない、ということになることもあります。
建物の構造は様々な種類があって、その土地と建てる建物の規模などによって、最適な構造を構造設計者が決める訳です。
つまり、簡単に「基礎」といっても、その種類は建物の構造によって色々とある、と言うことです。
それらの種類については次回にもう少し詳しく書いてみたいと思います。