建物の基礎について考える

建築施工図を書く為に必要な知識として、前回は独立基礎の概要を取り上げてみました。
直接基礎の種類は幾つかありますが、その中でも独立基礎というのは、本当によく登場する種類の構造です。
「基礎」と言うと、特別な表記がない限り独立基礎を想像してしまう、というくらいの存在です。
少なくとも私の中では、ですけど。
それでも今まで経験してきた物件の数と、その中の独立基礎の数を考えると、標準的な基礎の形状じゃないかと思います。
基礎伏図を書く側から言わせてもらうと、独立基礎はなかなか手強い基礎の種類という感じになりますが……
絶対に避けて通れる構造ではありませんから、ここでしっかりと覚えてしまうことをお勧めします。
いくら難しい要素があったとしても、結局仕事で建築施工図を書くのならば、どの要素からも逃げることは出来ませんから。
さて、今回は独立基礎と正反対の考え方を持っている「べた基礎」を取り上げて見たいと思います。


■べた基礎
独立基礎が柱の下にそれぞれ基礎を設けているのに対し、べた基礎は柱以外の場所にも基礎があります。
柱以外の部分にも……というよりも、建物の足元全体に、と表現した方がより正解に近いですね。
「べた基礎」という名前の通り、建物の足元一面に「べたー」っとコンクリートを打設するんです。
これがべた基礎の大きな特徴です。
柱の下に独立基礎を施工して、その基礎と柱同士を地中梁でつないでいくのが「独立基礎」。
一方のべた基礎は、柱の下にも当然基礎があるけれど、柱の下だけではなく全体に基礎を施工する訳です。
べた基礎は、ひとつの大きな構造体として、建物の荷重を均等に支持層へと伝えることが出来ます。
基礎がそれぞれ独立していないで、1枚の塊になっている為、基礎同士をつなぐ役目を持っている地中梁もありません。
コンクリートの形状としては、独立基礎よりも当然シンプルになりますから、建築施工図の難易度は少し下がります。
建築施工図が簡単だということは、実際の施工もそれほど難しくないということですから、全部の建物をべた基礎にすれば良いのに。
……と思うこともありますが、この納まりにすると地下ピットが造りにくくなってしまうので、そうはならないです。
多分。
■呼び方は様々
建物の下一面に打設するコンクリートは、「べた基礎」の他にも色々な呼び方があります。
「マットスラブ」「耐圧盤」「底盤」などなど……、私が知っている言葉だけでもこれだけあって、どれも同じものを指しています。
私が実際に仕事で使っているのはどんな呼び方か?
と、少しだけ思い出しながら考えてみましたが、その時によって色々な呼び方をしていますね。
話をする人に合わせてる、と言った方が正確かな。
相手が「マットスラブが……」と言うようであれば、自分も同じく「マットスラブ」という表現をしてみたり。
大抵の人にはどの表現でも通じるので、あまり表現の統一とかを気にすることなく使っています。
だから、これからこの言葉を覚える方も、全部まとめて覚えてしまった方が良いんじゃないかと思います。
相手がどんな表現をしてきても通じるようにした方が、打合せがスムーズに進みますよね?
なにより、その方がプロっぽくて良いですよね。
■杭基礎と言っても……
ちなみに、独立基礎やべた基礎の前に紹介した杭基礎も、「杭の上にどんな構造があるか」で基礎のパターンは変わってきます。
杭の上に独立基礎がある場合もあるし、べた基礎になっている場合もあるし、ということです。
こういう事を書くと、似たような名前の基礎とあいまって、混乱させてしまうだけかも知れませんが……
杭基礎と言っても杭だけが建物の荷重を伝達する訳ではなく、杭の上部に基礎が施工されてはじめて成り立つ構造です。
だから杭1本~4本程度の上に、それぞれ独立した基礎が設けられ、それらの基礎を地中梁でつなぐ構造もある。
杭の上にべた基礎を施工して、地中梁がない納まりになっている構造もあって、本当に様々なパターンがあります。
建物の地盤条件は場所によって違いますから、毎回ワンパターンになる訳がないのは想像できますよね。
だから、様々なパターンがあっても全然OKというか、様々なパターンがあるのが当たり前ということです。
建築施工図の作図者としては、様々なパターンがあることを知って、それに対して文句を言う訳にはいきません。
そんなヒマがあるのなら、基礎のパターンを一通り覚えてしまうことをお勧めします。
組み合わせは無限にある、という訳でもないですから。