鋼管杭

前回は建築施工図の中で、杭と基礎の関係について説明をしました。
杭の天端レベルには基礎が施工される関係にあり、それは支持層のレベルによって変わってきます。
支持層が深いレベル、基礎のはるか下にある場合には、そこまで建物の荷重を伝達する手段として杭が必要になる、ということです。
でも、支持層が浅いレベルにある場合には、そもそも杭が必要ではないこともあります。
そうした地盤の状況によって、地下の構造は色々と変わってきます。
もちろん基礎の仕様を決めるのは構造設計者で、建築施工図を書く側は構造図に書かれた仕様で基礎伏図を書けばOKです。
でも、基礎にはどんな種類があるのかは、建築施工図の作図者として知っておいた方が良いはず。
ということで、今回は基礎の種類をいくつか紹介したいと思います。


■大まかな分類
細かい説明は後ですることにして、まずは基礎の大まかな分類について考えてみましょう。
●杭基礎
●直接基礎
・独立基礎
・べた基礎
・布基礎
基礎の種類は、大体こんな分類になります。
大きくは「杭基礎」と「直接基礎」に分かれますが、これは先ほども書いたように、支持層がどのレベルにあるかで変わります。
埋め立て地などで支持層が深いレベルにあるのなら、そこまで基礎は届かないので杭基礎が採用されます。
もしくは、例えば山の中腹などで岩盤が多い土地で、杭を打ち込まなくても良いくらい浅いレベルに支持層がある場合は直接基礎が採用されます。
いずれにしても、建物の下部構造が支持層に届いている必要がある、というのは基本です。
基礎の種類を覚えるよりも先に、まずそれだけは覚えておきましょう。
■杭基礎
杭基礎というのは、基礎の下に杭が施行され、建物の荷重を基礎から杭へ、そして支持層へ伝えるパターンの基礎です。
杭の材質とか工法とかは色々とありますが、基本的には杭の頭に鉄筋が取り付けられ、そこに基礎の鉄筋が絡んで一体化されます。
最近は既製品の杭、工場で造った杭を現場に運んできて打ち込みタイプの杭が多いような気がしますね。
直径1mくらいの電柱を想像して貰えれば、ほぼ正解に近い形。
既製コンクリート杭
私の経験が偏っているだけの可能性も高いですけど、最近は結構この杭が多いです。
工場で製作をする為、長さとか仕様のオーダーを早めにする必要があり、当然杭伏図も先に必要になる杭です。
かなり昔の話ですが、埋め立て地の建てる建物の杭が鋼管杭、つまり鉄パイプのお化けみたいなやつだったこともあります。
鋼管杭
これはかなり大きい鋼管杭ですね。
先ほどのコンクリート杭もそうですけど、杭の径は建物の規模が大きければ大きいほど、太くなっていきます。
住宅とかだと、本当に電柱みたいな大きさの杭があったりします。
そもそも住宅では直接基礎の割合が多いですけど、建物の規模によって下部の構造が変わるのは、考えてみれば当然のことですよね。
鋼管杭を採用した現場では、鋼管杭をガンガン叩いて打ち込んでいくもんだから、うるさくて敵わなかったことを記憶しています。
人が全然住んでいない埋め立て地だからこそ、そんな思い切った工法が採用出来たんでしょうね。
もし住宅街の真ん中で工事が始まって、いきなり鋼管杭が運ばれてきてガンガンやり始めたら…
まあ間違いなく苦情の電話が殺到しますよね。
杭とは言っても、穴を掘ってそこに鉄筋を落とし込み、コンクリートを打設するような現場打ちの杭もあります。
とまあ、代表的な杭を思いつくままに幾つか挙げてみましたが、まだ杭の種類はたくさんあります。
ただ、どんなタイプの杭であっても、杭天端から少し下がったレベルが基礎の下端になるという納まりは変わりません。
その「少し下がった」寸法が、100とか300とか、そういう違いは多少ありますが、基本的な考え方は一緒。
それさえ覚えておけば、杭と基礎のレベルが連動することが分かり、基礎伏図の作図もスムーズに進みます。