躯体図を見る職種にはどんなものがあるか

コンクリートと並び、建物の構造体を構成する上で非常に重要な要素である「鉄筋」。
これがなぜコンクリートとセットで考えられるのか、というあたりの話を前回はしてみました。
RC造=「補強されたコンクリート造」であり、その補強というのはまさに鉄筋を使った補強のことを意味しています。
鉄筋はコンクリートとは違い、建物が完成した時には全て見えなくなってしまう存在。
だからあまり目立つことはありませんが、見えないからと言って役に立っていない訳ではありません。
人間の骨も同じですよね?
それが外から見えてしまうのは、何か重大な問題が起こっている時、という部分も似てますね。
人体の場合は骨折、それもかなり酷い症状、建物の場合は構造体の重大な損傷、ということです。
人体における骨と同じくらい重要な役割を果たしている、そう考えると、鉄筋がどのような存在か分かりやすいかも知れません。
一般的には「鉄筋コンクリート造」と呼ばれていることなどを見ても、鉄筋の重要性は充分に伝わったと思います。
それを踏まえて次の話に進む訳ですが、今回お伝えしたいのは、躯体図を実際に使う人は誰か、という点について。


■躯体図を使う二大職種
ここまで鉄筋の重要性をしつこく書いてきたのはなぜか。
なぜかというと、鉄筋を加工するという職種が躯体図と深く関わることになるからです。
鉄筋を加工して組み立てる人のことを、現場では「鉄筋屋」と呼ぶことが多いです。
そのまんまですけど、まあ分かりやすいから良いですよね。
その鉄筋屋さんが躯体図を見て、実際に鉄筋を加工して現場で施工を進めていくことになる訳です。
そして、躯体図と大きく関わってくるもうひとつの業種が、当然のことですけど以前説明した型枠大工さんです。
型枠大工さんがコンクリートを流し込む為の型枠を造り、その型枠の中には鉄筋屋さんが組み立てた鉄筋が入っている。
その状態から、型枠にコンクリートを流しこんで固まると、鉄筋とコンクリートが絡んで粘り強い構造体が完成。
ということになる訳です。
ちなみに、鉄筋には大きく分けて二種類の鉄筋があります。
ひとつは表面がツルッとした丸鋼と呼ばれる材料で、もうひとつは表面が凸凹している異径鉄筋と呼ばれる材料です。
ではどちらがよく使われるか?というと、もう圧倒的に異形鉄筋の方が多く使われてますね。
統計ととった訳ではありませんが、異形鉄筋=カラー液晶テレビの普及率、丸鋼=白黒テレビの普及率。
それくらいの差があるんじゃないか、というくらいの感覚で、とにかく丸鋼はほとんど出番がありません。
異形鉄筋は表面が凸凹している分だけ、コンクリートに絡みやすいという特徴があります。
異形鉄筋の凸凹はこんなイメージです。
異形鉄筋のイメージ
どうせコンクリートを補強する為に使うのであれば、よりコンクリートに馴染んだ方が良いですからね。
採用される理由はそのあたりにあるのでしょう。
■使う相手を意識すること
少し話がそれてしまいましたが…
躯体図を実際に現場で使う人が誰か、という話をわざわざ書いたのには、もちろんそれなりの理由があります。
建築施工図を作図するプロ、躯体図を作図するプロであれば、作図した図面は「商品」ということになります。
ここまでは良いでしょうか。
確かに建築施工図を作図するという行為は、一人で黙々と作業をすることが多いです。
だから完全な技術職だと勘違いしてしまいがちですが、実際には商品を使う相手がいるサービス業なんです。
まあこのあたりについては色々な意見があるでしょうけれど、少なくとも私はそう考えています。
だから何が言いたいか、というと。
自分が作図した商品を実際に使うお客さんがどんな人か、どのような情報を求めているか。
それを深く考えて考え抜いて、お客さんが喜ぶような商品を造り出すべきじゃないか、と思う訳です。
モノを売る商売の人が商品開発をする際に、売るターゲットについて深く調査をするのはなぜでしょうか。
それは、ターゲットが何を求めているかを知ることと、商品が売れることがイコールだからです。
残念ながら建築施工図は、図面を作図するという行為にお金を払う人と、実際に建築施工図を使う人が違います。
お金を払うのはゼネコンで、実際に使うのは型枠大工さんであり、鉄筋屋さんなどです。
また、その建物の建築施工図を作図する際には、同じ図面を何枚も作図することはありません。
その部分の躯体図が見たい、となると、基本的には一枚しか存在しないことになる訳です。
実際に建築施工図を使う人がお金を払う訳ではない、ということと、基本的にはライバル商品がないということ。
これらの理由によって、建築施工図は商品としてはかなり特殊な状態になっているんですね。
簡単に言ってしまえば「独占」ですね。
実際は競争が存在しない訳でもないですけど、分かりやすく競争原理が働く訳じゃないのも確か。
だから、建築施工図を作図する技術者としては、実際に使うお客さんの求めるものを意識することが大事なんです。
躯体図を型枠大工さんと鉄筋屋さんが使います、という話をしたのは、作図する際にそれを意識して欲しかったから。
ちょっと長くなってしまったので、具体的にどんな情報を求めているかは次回に説明します。